局内の様子
INSIDE THE OFFICE

漂流私書箱

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『漂流郵便局』とは、届け先の分からない手紙を受け付ける郵便局であり、
「漂流郵便局留め」という形で、いつか宛先不明の存在に届くまで
漂流私書箱に手紙を漂わせてお預かりする郵便局である。

漂流私書箱の役割は、いわゆるタイムカプセルではなく
ボトルメールを流すための「波打ち際」に重ねられる。

たとえ宛先が人間が人間でなくなった先の存在でも、
または人間が人間になる前の存在でも届き得るほどの大きな時空を飛び越えるために、
メッセージを整理してストックするのではなく
メッセージを漂流させ行方不明にするものとして、
誰かの所有から離れ、誰のものでありながら誰のものでもない状態、
現世に固定されない浮遊状態に留めておく装置のあり方として漂流私書箱がある。

-手紙は確かに私書箱のなかにあるが、どこに在るのか分からなくする-

回転する八角形の卓に無数のピアノ線を挿し込み、
その線同士をマグネットを仕込んだブリキの箱でつなぐことで
フワフワと揺れながら自立する構造になっている。

卓を回転させると、無数の箱の位置関係が不明瞭になるとともに
ピアノ線と箱が風に吹かれるススキのようにわさわさと音を立てて揺れる。
卓の下には金属ブラシが仕込んであり、さざ波のような音も立つ。

この「ススキが揺れる」「波が寄せ返る」という自然の振動現象には、
「存在が現れる / 消える」というエネルギーの推移を感じることができる。
箱たちがざわざわと揺れる姿と音に、投函された言葉たちのエネルギーが
現れては消える=漂うことのエネルギーに移り変わっていくことが感じられる仕組みとなっている。

ボトルメールとは、メッセージの内容を伝えること以上に
「私」という送った存在がいるということ自体を強く伝えるための方法である。

漂流私書箱とは、投函される一つ一つのメッセージの内容以上に、
「この世にはメッセージを送るものが絶えずいる」
ということの価値そのものを、
「返事がなくとも絶えず語りかけ続ける」
という、人間を人間たらしめている眼差しの価値そのものを伝え、
人間以前と人間以後をつなぐ些細な時間のなかに生きる我々という存在の意義と意味を静かに謳う、
ささやかな装置、または楽器なのである。

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漂流私書箱制作

久保田沙耶×永田康祐×松島潤平